認知症の評価スケールの種類と特徴

認知症は、脳の機能が低下して、記憶力や判断力などが衰える病気です。認知症の症状は、人によって異なりますが、一般的には、見当識の低下、言語障害、空間認識障害、動作認識障害などがあります。認知症の診断は、医師による検査や画像診断などが必要ですが、その前に、認知症を疑う手掛かりになる尺度があります。それが、認知症の評価スケールです。認知症の評価スケールにはいろいろな種類がありますが、ここでは代表的な4つの評価スケールについて紹介します。

HDS-R(長谷川式評価スケール)

HDS-Rは、日本で最も広く使われている認知症の評価スケールです。口頭による質問のみで簡易的に行うことができます。質問では、自分の置かれた状況が把握できているかの見当識や記憶力を主に測ります。30点満点のうち、20点以下だと認知症の疑いがあるとされます。HDS-Rは、認知症の有無や程度を測るだけでなく、認知症の原因やタイプを推測する手がかりにもなります。例えば、見当識が低下している場合は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の可能性が高く、逆に見当識が高い場合は、レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症の可能性が高いと考えられます。

MMSE(ミニメンタルステート検査)

MMSEは、世界的に広く使われている認知症の評価スケールです。口頭での質問に加え、記述や図形の描写で空間認識や動作認識を測ります。30点満点のうち、23点以下だと認知症の疑いがあるとされます。MMSEは、HDS-Rよりも詳細に認知機能を測ることができますが、その分、時間や道具が必要になります。また、MMSEは、教育水準や年齢によって得点が変わりやすいという欠点があります。例えば、高学歴者は、低学歴者よりも高得点を取りやすく、高齢者は、若年者よりも低得点を取りやすいという傾向があります。そのため、MMSEの得点を判断する際には、個人の背景を考慮する必要があります。

CDR(臨床症状評価尺度)

CDRは、観察形式の評価スケールで、日常生活の観察や家族などへのヒアリングによって、認知症の重症度・進行度を測ります。評価は5段階に分かれ、0が正常、0.5が軽度認知障害、1~3が認知症という評価です。CDRは、認知症の症状が日常生活にどのように影響しているかを評価することができます。例えば、CDRが1だと、日常生活の一部に支障が出ていることを意味します。CDRが2だと、日常生活の大部分に支障が出ていることを意味します。CDRが3だと、日常生活のほとんどすべてに支障が出ていることを意味します。CDRは、認知症の治療や介護の計画を立てる際に、重要な指標となります。

FAST(アルツハイマー型認知症の重症度分類)

FASTは、観察形式の評価スケールで、アルツハイマー型認知症の重症度の分類に特化したスケールです。7段階に分かれ、数字が大きいほどより重症であるという評価です。FASTは、アルツハイマー型認知症の病期や予後を判断することができます。例えば、FASTが1だと、正常な認知機能を示します。FASTが2だと、軽度の記憶障害を示します。FASTが3だと、中等度の記憶障害を示します。FASTが4だと、中等度の認知障害を示します

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